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Text File  |  1994-11-16  |  2KB  |  35 lines

  1. 490/490   WST00364  和田 光平         さわらぬ神にたたりなし(尾張)
  2. ( 8)   94/02/25 13:45
  3.  
  4.   さわらぬ神にたたりなし(尾張)
  5.  
  6.  私は,このカルタからヤマトタケルの物語を想起しました.東国を討伐し尾張に戻っ
  7. たヤマトタケルは,尾張の首長とその娘に大切なアメノムラクモの剣を託し,伊吹の神
  8. を倒しに行きます.ごく気軽に倒せる相手だと踏んでいたところ,伊吹の神は意外に
  9. 強く抵抗しました.この戦いでヤマトタケルは傷つきます.
  10.  壬申の乱の際,大海皇子は吉野から桑名へ出て,大垣を経由して大津へ攻め上がって
  11. います.古来から確立されていた大和と尾張を結ぶ道だったのでしょう. 
  12.   伊吹を撤退したヤマトタケルは, 逆の道をとり桑名から鈴鹿への道を辿りました. 
  13.   江戸時代の主要幹線ルート東海道も桑名から西に道をとって,鈴鹿の山を越えて行き
  14. ます.鈴鹿山脈の手前に庄野の宿があります.安藤広重の版画の中でも私は庄野が一等
  15. 好きです.東海道53次では最後に認可された小さな宿場でした. 傘をさして夕立の中を
  16. 急ぐ人と微かな家影. 雨の表現で, これほど見事なものを他に知りません. 
  17.   庄野の手前に, あの能褒野があります. ノボノと聞いてヤマトタケルが出て来るのは
  18. 戦前の教育を受けた人だけかも知れません.この英雄は, 戦後の教科書から抹消されて
  19. います. 小学校の恩師が自由教科で古事記のヤマトタケル伝説を取り上げてくれました
  20. ので, 私には懐かしいのです. 
  21.   伊吹の神に傷つけられたヤマトタケルは, ここで「我が足は三重に折れぬ」と, もう
  22. 動けないことを告げます. 三重県の地名は, この故事によります. 
  23.   そして鈴鹿山脈に遮られた間近なる故郷, 大和の地に思いを馳せるのです. 
  24.   元気な足なら, 一日二日の行程です. 遙か東国への遠征から10年? 目と鼻の先まで
  25. 戻って来て, 故郷へ帰れないもどかしさは筆舌に尽くし難いものがあります. 
  26.  
  27.   大和は国のまほろば  たたなずく  青垣  山籠もれる 大和し美わし
  28.  
  29.  ヤマトタケルの, 絶唱です. 涙なくして味わえない感慨を覚えます.
  30.  私もまた,大和の地から送られて,長い転勤生活をスタートし,東京から名古屋へと
  31. 転戦して来たせいでしょう.尾張の国が嫌いな分けでは無いけれど,甘橿の岡から眺め
  32. た,みどり滴る大地と,大和三山がまします風景が,懐かしく思い出されるのです.
  33.  
  34.                           東海支社)和田 光平
  35.